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19年度・20年度目次

提 言
 ○会長
 ○教育センター指導主事
 ○指導室 指導主事
 ○音楽研究会 委員長

研究部の活動
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 ○音楽教育研究部

各種研修会
 ○講演会・総会
 ○夏季研修会
   (愛知県小中学校音楽教育研究大会)
 ○冬季研修会
 ○部活動指導者研修会
      ・第1回 合唱(指揮)
      ・第2回 合奏(器楽)
      ・第3回 合唱(発声・和声)

音楽関係行事
 ○年間行事予定
 ○ナゴヤ・マーチング&バトンウェーブ’09
 ○市小中学校連合音楽会
            (教育祭)
 ○市小学校バンド演奏会
 ○市小中学校合唱フェスティバル

ワン・ポイント・アドバイス
 ○新学習指導要領@

個人研究
 ○教育研究派遣員紹介
 ○指導体験記録入賞者紹介
 ○私の研究

            目指せ!リコーダー名人
                  〜ていねいに優しく美しく〜
                        名古屋市立藤が丘小学校    鈴木好美

1 はじめに
   私は,1年間の育児休業を経て職場に復帰した。この日が来るのが待ち遠しくもあり不安でもあった。学校の子どもたちや先生方にはとても会いたかったが,1年間の育児休業というブランクは大きく,家庭との両立に不安を抱いていたからだ。
   今年度私は,学級担任ではなく,少人数・TT担当として子どもたちと関わることになった。今まで学級担任として関わってきた私にとって,この発表は胸に穴が開いたような寂しさを感じた。その一方で,これでよかったと思う気持ちもあった。仮に担任を持たせてもらうことができたとしても,学級担任としての責任を果たせないかも知れないという思いが消えなかったからだ。そんな葛藤をしながらも,少人数・TT担当として,目の前の子どもたちのために,自分に何ができるのか考えていきたいと思った。
   始業式で,学級担任が発表されてから,少人数・TT担当としての具体的な内容が決まるまでには,少し時間がかかった。慌ただしく各学年の先生方が学級担任として準備をする中,私はひとり取り残されたような気がして寂しさを感じることもあった。そんな先生方の姿を見ながら,学級担任を持っている先生方を羨ましく思った。学級担任として子どもたちと接することができるのは,とても幸せなことだということに,改めて気付かされた。そういうことに気付かせてくれた「貴重な1年」の始まりであった。
2 3年生とリコーダー
   真新しいリコーダーを手にし,笑顔を浮かべ喜ぶ3年生を見て,楽器は,子どもたちにとって魅力的なものであることを改めて感じた。さらに,自分の楽器となれば,なおさらである。子どもたちが今のこの気持ちを持続しながら学んでいけるよう,リコーダーの指導に当たりたいと心から思った。「好きこそものの上手なれ」という言葉があるが,私も気持ちがあれば自然と行動が伴ってくるものだと常々感じている。だからこそ「やる気」を大切にしたいと思うのである。
   私のリコーダー指導は,「上手になりたい!という気持ちさえあれば絶対に上手に吹けるようになる」という言葉から始まった。
3 本年度のあゆみ








4 実践の内容
(1)リコーダー入門(1学期)
   リコーダーTとなかよくなろう!
  〈ねらい〉リコーダーの扱い方を身に付ける

   リコーダーの入門であるリコーダーの扱い方を学習するにあたり,リコーダーに強く興味を示す子どもたちに「○○してはいけません」という否定的な言葉を使うことは避けたいと思った。しかし,リコーダーの扱い方は身に付けさせなくてはならない。私は,北村俊彦先生のリコーダー講座で教えていただいた,リコーダーを擬人化する方法を思い出した。子どもたちに「リコーダーTのめいし」を提示し,リコーダーの扱い方を「リコーダーTからのメッセージ」として伝えることにした。リコーダー君の自己紹介を聞くと,子どもたちは,リコーダーに対する愛着を強くしたようであった。すると,自然にリコーダーを大切に扱うようになった。Yさんは,「リコーダーちゃん」と呼び掛けてかわいがり始めた。また,だれかがリコーダーを落としてしまったときには「リコーダーちゃんが泣いてるよ」と声をかけていた。リコーダーを自分の友達のように意識させることで,リコーダーを大切にしようという思いを高めることができたと考える。
(2)日常実践@(1学期)  リコーダー語(タンギング)を覚えよう!
   〈ねらい〉音の始まりや終わりをはっきりさせるために,舌を使って息を出したり止めたりする方法(タンギング)を身に付ける。
   タンギングは,リコーダー演奏に欠かせない技法である。3年生の子どもたちにタンギングを身に付けさせるためには,工夫が必要だと思った。単純に「トゥートゥー,タンギングをしっかりしましょう」と言われても,子どもには何をどうやればいいのか分からないであろう。意味が分からなければ,ただやらさせているという思いが強くなるのではないだろうかと思った。私自身,「タンギングって何?」と思った経験があった。そこで,まず「タンギングとは,音の始まりと終わりをはっきりさせるために,舌を使って息を出したり止めたりする方法です」と説明した。そして,タンギングを無理なく自然と身に付けさせるために「リコーダー語」を取り入れることにした。これは,擬人化したリコーダーと会話する言葉「リコーダー語」(タカタカティキティキトゥクトゥク)を提示し,子どもたちがリコーダー語で声をかけることでタンギングを身に付けるという方法である。これによって,タンギングの際の舌使いを遊び感覚で身に付けることができるのではないかと考えたからである。そして,楽しければ継続して練習しようという気持ちにさせることができると思った。
   私は,授業の中で「外国で生まれたリコーダー君にはリコーダー語で話しましょう。リコーダー語は『タカタカティキティキトゥクトゥク』です。声をかけてあげればあげるほど,リコーダーが上手に吹けるよ」と話した。すると,子どもたちは,おもしろがって何度も繰り返しリコーダー語を話していた。さらに,「先生よりも速く言えるかな?」と言うと,子どもたちは得意げになって早口言葉のようにリコーダー語を言い合っていた。一見何でもない言葉であるが,何度も舌を動かすこの言葉は,タンギング練習には効果的である。スピードや回数を競い合い互いに高め合える点において,従来の「トゥートゥー」より手応えを感じた。リコーダー語になれてくると,N君が「リコーダー語,目標1日100回やります」と行ってきた。それを私がみんなに伝えると,K君が「おれは200回!」と言い出した。私は,子どもたちのこのやる気がとても嬉しかった。

(3日常実践A(1学期)  リコーダー演奏にふさわしい姿勢を考えよう!
   〈ねらい〉演奏にふさわしい姿勢,構え方を身に付ける。
   リコーダーの扱い方,タンギングと学習してきて「早くリコーダーを吹いてみたい!」という子どもたちの気持ちがすごく伝わってきていたが,演奏に入る前に押さえておきたい大切なことがもう一つあった。それは,演奏にふさわしい姿勢を身に付けさせることである。まず,私は,子どもたちに,演奏にふさわしい姿勢を考えさせることにした。子どもたちは,足を床につけること,背もたれにもたれてはいけないこと,ひじをついてはいけないことなどのポイントを,しっかりと押さえることができていたが,実際にやってもらうと,一生懸命良い姿勢をとろうとするあまり,肩が上がり身体がかたくなって緊張している様子であった。
   北村先生はリコーダーの姿勢について指導する際に,「この部屋には,リコーダーが上手になる栄養がたくさん詰まっています。足を床にしっかりつけてこの栄養を吸い取りましょう」と話されていた。大人の私でも,この言葉を聞いた瞬間から無邪気になって床にしっかり足をつけていた。そして,「これなら学校の子どもたちも自然と足をつけることができる!」と思っていた。私は,早速子どもたちにおなじように伝えた。子どもたちは「そんな栄養,本当にあるわけないよ」といいながらも,しっかりと足をつけうようになった。足が床につかなかった子は,自然といすの前の方に座って足をつけられるようになった。しかし,足の方にばかり気を取られ,背もたれに背中がついている子どもがいたので,私は「背もたれに背中をつけていると,吸い取った栄養が背もたれに吸われちゃうよ!」とつけ加えた。すると,子どもたちは,ビクッとして背筋を伸ばした。
   私は,リラックスしながらも良い姿勢をとることができるようになった子どもたちの様子を見て,「次の時間から,リコーダー演奏をするよ」と伝えた。子どもたちは,みんな「やったね!」と言って,とても嬉しそうにしていた。
(4)日常実践B(1・2学期)  リコーダーの音をつくろう!
  〈ねらい〉進んで階名唱をし,リコーダーの音をつくることができる。
   5月になって,ようやくリコーダー演奏を開始した。子どもたちは「やっと演奏できる」と言って,笑顔いっぱいであった。嬉しさのあまり,勢いよく鋭い音でピーピー吹いてしまう子どもが少なくなかった。あまりのうるささに,思わず「うるさい!」と叫んでいる子どももいた。私は,そんな様子を見て,あるハンドサインを決めた。「演奏をやめ,リコーダーを机の上に置き,私の方を見なさい!」というサインである。こういうときは,声を張り上げて演奏を止めるより,ハンドサインを出す方が素早く演奏をやめさせることができるであろうと思った。それは,私の喉を壊さないようにするためでもある。
   ここでは,リコーダーの音を知り,リコーダーの音(ていねいに優しく美しく)をつくることを目標にした。ていねいに優しく美しい音をつくるには,タンギングをすることはもちろんのこと,階名唱ができることが大切であると思った。そのため,どの曲も必ず自分で階名を記入する時間をとるようにして,階名唱をおこなった。練習曲は厳選し,始めの1ヶ月間は「シ」の音のみで構成されていて,なるべく短い曲を使用して練習することにした。たった1音の曲でも,何か1曲を演奏したという充実感や満足感を味わわせることで,意欲を持続させていきたいと思ったからである。階名が苦手だった子どもも,慣れてくると「この曲,全部シだよ!」と言って自信をつけ,階名をスラスラ書けるようになっていた。また,私のピアノ伴奏に合わせてリコーダー演奏をするうちに,子どもたちは,合わせるということの楽しさを実感したようであった。特に,「笛星人」という曲がお気に入りで,「笛星人」の伴奏が始まると喜んでいた。子どもたちは,曲が終わると決まって「もう1回,もう1回」と言い,授業が終了して放課になっても「まだやりたい!」と言って音楽室に残って練習していた。
(5)授業実践@(6月)  ふしとリズム
  〈ねらい〉ていねいに優しく美しい音で演奏することができる。
 @ねらいを達成するための手だて「リレー演奏」
   「リレー演奏」とは,同じフレーズを順番に演奏したり,1曲を1フレーズごと順番に演奏したりする演奏方法である。一人一人が演奏する音が少ない「リレー演奏」は,リコーダーの苦手な子どもも意欲的に取り組むことができる。また,順番に続けて演奏していくので,自然と友達の演奏を聴くこともできる上に,演奏を聴くことによって良い演奏方法を感じ取り,互いの練習意欲が高められると考えた。そして,仲間と共に楽しみながらリコーダー演奏の基礎・基本を確かなものにしていきたいと考えた。ていねいに優しく美しい音で演奏するには,基礎・基本の定着を図ることが大切である。
 A実践の様子   中心教材「かっこう」
   私は,この授業実践において,かっこうの鳴き声(階名では,ドとラ)をリレー演奏することにした。そのために子どもたちにかっこうの鳴き声のCDを聴かせ,拍のとり方やリズムを考えさせた。実際に演奏に入ると,子どもたちは,自分の順番が来るまで前の子の演奏をしっかり聴き演奏することができていた。また,順番を変えるときには「○番目がいい!」と言って意欲的に練習に参加していた。友達の演奏を聴いたり見たりしているうちに「穴をきちんとふさげていなかった」「○○さんは,きれいな音が出ていた」などの声が自然と挙がった。その中で,S君が「Eさんは,ずっとラの音を押していたように見えたけど,ドの音もちゃんと聞こえた」と発言した。私は,その発言にとても感心した。そこで,Eさんの演奏の様子をみんなに見せ,気付いたことを発表させることにした。すると,Yさんが「本当だ。ずっとラの音の指になってるよ」と言い,再びS君が「でも,ドの音もラの音も両方とも聞こえるよね」と言った。私は,指の動きに注目させるために,「横から見るとどうなってるかな?」と問い掛け,再度Eさんに演奏してもらった。すると,驚いたようにS君が「ちゃんと人差し指,上げてる!」と言い,I君が「少しでも指を上げれば,ラの音が出るんだ」と言って,新たな発見に喜んでいた。そこで私は,「良いことに気付いたね。少しでも人差し指を上げれば,ラの音は出るし,上げすぎない方がしっかりふさげるよ」と話した。その後,大きく指を動かして演奏していた子どもも,指の動かし方が小さくスムーズになり,音の濁りが少なくなった。それは,ていねいに優しく美しい音で演奏することにおいて大きな一歩であったと思う。
(6)日常実践C(2学期)  リコーダーチャレンジタイム
  〈ねらい〉自分に合った目標を持ち,無理なく練習に取り組むことができる。
  2学期の最初の授業では,夏休み中のリコーダー練習の成果を聴くことにしていた。子どもたちは教室に入ってくると「先生,たくさん練習したよ」「今日,リコーダーやるよね」とリコーダーを演奏することにとても前向きであった。私は,子どもたちの演奏を聴くのが楽しみになった。私の予想以上に上手に演奏できる子どももいて,夏休みの練習の成果を感じた。しかし,うまく演奏できない子どもとの差は大きく,これをどうにかしなければならないと思った。そこで始めたのが,「リコーダーチャレンジタイム」である。まず私は,チャレンジタイム用のプリントを作った。個々のレベルに合わせられるよう難易度の低い曲から高い曲へ順に並べて,合格したら次の曲へ進むことができるシステムにした。クラスの半数以上の子どもたちは,この活動に意欲を見せ「吹けるようになったよ!先生,聴いて!」と言って,いつも列をつくっていた。あまりの行列に,列に並んでいる全ての子の演奏を聴くことができなかったり,決まった子だけが列に並んだりという問題もあった。そこで私は,「今日は練習曲1〜5番までを合格していない子限定!」と言って,列に並べる子どもを限定した。今まで何度も列に並んでいた子どもからは,「え〜!!」という声が挙がったが,「あなたたちの演奏は十分聴かせてもらって,上手に吹けていることは分かってるから大丈夫!」と言ったら,納得した様子で自席で練習をしていた。
(7)授業実践A(9月)  曲の漢字をとらえて
  〈ねらい〉曲に合った表現で演奏することができる。
 @ねらいを達成するための手だて「なりきり演奏」
   「なりきり演奏」とは,曲に合った表現で演奏ができるよう,曲の中に出てくる主人公そのものになりきって演奏する方法である。まず,なりきるものについての話を聞いたり写真を見たりして,なりきるものの知識を深め,どのように表現したら良いかを話し合わせることにした。そうすることで,なりきるものを意識して表現方法を工夫し合い,曲に合った表現で演奏できることを目指すようになる。また,この活動を通して,表現することの楽しさを味わわせていきたいと思った。
 A実践の様子   中心教材「聖者の行進」
   「聖者の行進」では,リコーダー演奏の前に,歌と行進で曲のイメージをつかませたいと考えた。この実践は,教育センター指導主事である青木香織先生に見ていただくことになっていたので,私自身,とても緊張していた。子どもたちは,教室にたくさんの先生方がみえ,緊張半分,意欲半分といった様子であった。今回の「なりきり演奏」では,聖者になりきって演奏することを伝えた。そのためには,聖者について知ることが大切である。私は,黒人霊歌という曲の背景に触れながら,聖者についての話をした。そして,聖者らしく歌うにはどうしたらよいか話し合わせた。S君は「やっぱり元気よく大きな声で歌うのがいいんじゃない?」と言い,続けてK君が「フレーズの最後は,跳ね上げて歌うともっといいよ!」と言って,実際に歌ってみせてくれた。みんなは拍手をして,その歌い方に賛成した。元々,曲を知っている子どもが多かったこともあり,聖者らしく力強い歌声で歌うことができていた。さらに,聖者になりきることができるようにするために,行進させることにした。子どもたちは列ごとに話し合い,「足を高く上げる」「手を大きく振る」「胸を張る」「みんなで,かけ声をかける」などの意見を出していた。曲に合わせて歌いながら行進をすることはなかなか難しく,曲の途中で「A君の列は,勇敢な聖者がいるぞ!」「Oさんの列は,声が大きくて強そう」などの声かけをして,互いを意識して向上できるようにした。子どもたちは,互いに負けずとなりきっていた。また,子どもたちの様子から,聖者になりきって歌ったり行進したりすることを,、楽しんでやっていることがよく伝わってきた。この活動は,リコーダーによる演奏にも生かされ,子どもたちは曲に合った表現で演奏することができていた。
5 まとめ
   この1年を通して,私がとても嬉しかったことは,授業の終わりに子どもたちから聞こえた「もっとやりたい!」という声である。私は,子どもたちのこの一声によって褒められているような期になり,励まされていたと感じる。子どもたちが見せた意欲は,私のパワーの源となっていた。私は,子どもたちをもっと褒めてあげたいと思う。そして,子どもたちが私にしてくれたように,成長へのパワーを引き出していきたい。どんなときも子どもたちが楽しく学べるように,日々努力していきたいと思う。そんな毎日の繰り返した,私の教員生活となってくれたら幸いである。
   この記録は,教師経験5年目,復帰して1年目の節目に自分なりに1年を振り返る。自分の足跡をしっかり残しておきたいと思いつづったものである。この記録を書いていくうちに充実した1年を送れたのは,渡井sを支えてくださった先生方,学校の子どもたち,家族の協力があったからこそだという思いが強くなった。10年後,20年後もこの気持ちを忘れずに,教員生活を送っていきたいと強く思う。そのころにこの記録をもう一度読んでみたいと思う。