言語活動の充実と音楽科教育について


                        名古屋市教育委員会  指導室
                                      指導主事    稲 熊 和 己


   学習指導要領が改訂され,現在,小学校では平成23年度,中学校では平成24年度の完全実施に向け,改訂のポイントや内容についての理解を深め,その効果的な指導の方法を工夫・検討しているところだと思います。
  さて,今回の改訂の柱に「思考力や判断力等をはぐくむために,基礎的・基本的な知識・技能を活用する学習指導を重視するとともに,すべての教科等において言語活動の充実を図る。」といった内容があります。この内容を音楽科教育で考えてみると次のようになるのではないでしょうか。
○「表現」では,その曲に対する自らの思いや意図に近付けるために,音楽の諸要素の働きや曲の構成などに着目して表現を工夫すること。
○「鑑賞」では,その曲に対する自らの思いや意図をもって鑑賞し,音楽の諸要素の働きや曲の構成などに着目して,その表現を批評すること。
  これらは,今までの音楽科教育でも大切にしてきたことです。しかし,振り返ってみると,表現を工夫する場面でも,鑑賞による批評をする場面でも,子どもたちが自分の思いや意図を相手に伝える手段である言葉(言語)が十分でないため,活動が曖昧であったり深まりがなかったりした経験があるのではないでしょうか。確かに,音楽を100%言葉で言い表すことは不可能だと思います。しかし,「不可能だ』という思いが優先し,本当は言語表現できる内容でありながら,それに挑戦せず通り過ぎてしまった場面はなかったでしょうか。
  今回の改訂で,音楽の諸要素や構成などが〔共通事項〕として明示されました。音楽的な能力を高めるためには,〔共通事項〕を知識として理解し,それらを感受する活動をきちんと行う中で,知識と感受の両面から,その状況を言葉で表現できる語彙を増やしていくことが大切だと考えます(例えば,「付点のリズムでテンポが速いから(知識),馬が軽快に走っているような感じがする(感受)」といったように)。
  また,低学年の学習では,すぐに言葉で表すことは難しいので,身体表現や絵などを使ったり,教師が示す言葉の選択肢から選ばせたりしながら,「なぜそう感じたか?」を考えさせる,段階的な活動を工夫することも必要です。